入学の春!リードにも来月からデザイナーが一人増えます。
そんなワケで今回はやや脱線して、職種としてのグラフィックデザイナーを掘り下げてみましょう。
デザイナーになりたい、デザイナーを雇いたい、と思っている方は一読して見て下さい。
「グラフィックデザイナーって?」
よく「職業はデザイナーです」と聞くと、受け取る人によってそのイメージは「ファッションデザイナー」であったり「ポスター作る人」であったり、もしくは何でもできるクリエイティブな職人のイメージを持たれると思います。
絵も描けるし写真も上手だし、何でも作れちゃうんでしょ〜的な誤解は怖いものです。
では、私たちリードの制作部にいるいわゆる『グラフィックデザイナー』とはどんな職種なのでしょう?
ざっくり言うと「写真や動画、二次元の絵画やイラスト、文章などを同一画面に構成する職業」のことを差します。結構おおざっぱな括りなのです。
WEB全盛期の今では職業デザイナーとしてはグラフィックデザイナーよりもウェブデザイナーの方が有名かもしれませんね。
彼らは電子媒体専門のグラフィックを仕事にしている人たちの事を差します。
他にも素材だけを作る人や、文字組みのみのプロフェッショナルなど専門的な職種をイラストレーター(イラスト素材作成)、エディトリアルデザイナー(雑誌などを専門)、フォトグラファー(写真撮影)、レタッチャー(写真補正や画像合成)などと分類したりもします。より専門職だと思って下さい。
もちろん、一人で素材から何から制作できちゃう万能グラフィックデザイナーさんもいらっしゃいますよ。
「グラフィック」の言葉の定義が大きいので、こんな複雑なことになっちゃってるのですが…日本では特に商業ベースの仕事をするのをグラフィックデザイナー、芸術性を追い求め作品を作る人を芸術家やアーティストと言い分けて使う事も多いです。
私は昔から後輩の子が「仕事を自分の作品化」して暴走してしまった際に(デザイナーの若気の至りあるある、ですね)「あなたは芸術家ではなくデザイナーだから、自分のやりたい事をするんじゃなくてクライアントの要望を叶える為のデザインをしなくちゃならない。クライアントはあなたにお金を払って作品を作って貰ってるんじゃなく、私たちが、クライアントから頂くお金に見合う以上の、相手が必要とするデザイン(仕事)を上げなくてはいけないのよ。常に『以上』の仕事をしなくては次にまた選ばれる事はないからね」極端かもしれませんが、こう言ってきました(こんな丁寧語じゃないけども)。
自分が職業としてのデザイナーを選んで来たからこそ、の言い回しかもしれません。
う〜ん、まあ自分の耳にも痛い言葉です(笑)。

「グラフィックデザイナーに資格はあるの?」
グラフィックデザイナーには資格はありませんが、DTPで主に使用される主要アプリが問題なく使える事や、構成や色の美的センス、クライアントやディレクターの意図を正しく読み取れるコミュニケーション能力も必要となってきます。
「フォトショップ」や「イラストレーター」などのアプリの名称は皆さん耳にした事があるのではないでしょうか?
今や趣味で弄る方も増えてきましたね。それらを使いこなせないと、なかなか難しい仕事ではあります。
以前はAdobeさんがMacOS用にしかアプリを作っていませんでしたが、今やWindowsにも対応され、「デザイナーはMac」という定説は表向き無くなりました。
アプリ毎の検定などもありますが、正直な所「○級持っています!」というよりもいくつ実務をこなして来たかの方が余程評価されますので、グラフィックデザイナーになりたい方はまずは業界に飛び込んで修行を重ねるのが一番です。
一人前の仕事が一人で出来る様になるには、2〜3年は必要だと思います。
経験者優遇&未経験でもOKとはいえ、もちろん作品ファイルのないような人は相手にされませんから、デザインや絵など自分のデザインセンスが分かる物を作りだめておく必要はあります。
ポートフォリオの細かい気配りやセンスなども意外と見られていますので、手を抜かない様にしましょう。
「グラフィックデザイナーの実態は?」
偉そうに語っている私は、実はグラフィックデザイナーとしてはまだ5年しか経験がありません。
以前はTV&携帯ゲーム機のソフト制作会社で3DCGやドット絵を描くCGデザイナーをしていました。
イラストレーターはそれほど触っていませんでしたが、フォトショップは少々、あとはMayaなどの3Dソフト中心で仕事をしていたので、DTPの世界に入るのは冒険でした。
「PCでデザイン仕事していたんだからほとんど一緒でしょ?」と思った人、大間違いです!
転職活動している最中の私も「まあ出来るだろう」などと甘い考えをしていたのは否めません(笑)。
私を採用してくれた取締役2人はさぞ「使えないヤツ採ってしまった!」と思った事でしょう。「入稿」なんてした経験ゼロでしたから。
美大出で多少の知識はあったものの、「1.5〜2年で1本&容量は極力軽量化&RGBで2進法&絶対のオリジナル死守!」の世界にいた私には「(当時)2日でチラシ1枚、350dpiのcmyk&流行ものに乗る!」の世界は真逆の場だったのです。
当たり前のルールを真逆にシフトするのは蓄積した知識を捨てるとともに、考え方も一から学ばなくてはなりませんでした。むしろ無駄な知識とプライドなどなく、まっさらだったら楽だったでしょう。
そんな私が5年で学んだ「グラフィックデザイナーに必要だと思うスキル!」それは…
迅速かつ正確な作業、流行ものに敏感なセンスとアイディア、頭の回転の速さ、とにかく体力!聞く力!
スピードを一番に挙げたのは、クライアントさんは「今」欲していて「すぐ」に形として見たい、「今」の時代に合ったデザインをする必要があるから「早い」に越した事がないからです。早さ重視で中身が空っぽじゃもちろん駄目ですけども。
あとは言わずもがな、センス(笑)。
原稿自体のブレーン役は他の人でもいいのですが、デザイナーがその才を持ち合わせていればデザインに組み込み易く、オリジナリティが出ます。
デザインは絶対の正解がないので横道に逸れがちですから、「コミュ力」も必須スキルです。
「体力」はやや大げさですけど、トラブルで2徹くらいならリード入社後にもありました。
ただ、ゲーム屋時代は睡眠時間2時間休み無し3ヶ月間ぶっつづけが当たり前にあったので、グラフィックデザイナーは大した事はないですね(笑)。
DTPグラフィックデザインの素敵な点は形として手に取れ、街中に自分のデザインしたものが出て、チラシにおいては「集客」としてエンドユーザーから評価が返ってくることが言えます。
タイムリーなものを作る事が多いのでどんどん新しいデザインができるのも魅力ですね。
何かを動かして数字が動くような職業とは違って、自分の内から生み出したものが認められる事は純粋に大きな喜びに繋がります。
あなたが仕事を発注する側であるならば、制作物への感想をデザイナーに届くよう伝えてあげてください。それが指摘であれば好みの判断材料になりますし、お褒めの言葉であれば大きなモチベーションになります。
今回は職業としてのグラフィックデザイナーを語ってみました。
次回はまた戻って集客に繋がるデザインについて掘り下げようと思います。
安永和郎
2015年7月4日 at 3:29 PM
Emiさんのエッヂの効いたハイセンスな記事にいつも感心しています。
報告書やレポートを書くことの多い仕事をしていますが、目的や趣意は絶対に外さない範囲で、ちょっとした遊び心で(韻を踏むなどの)文学的レトリックを交えただけで、意味もわからないくせに嘲笑される世界にいると逆に自分の方が唐変木のように思えてきて情けなくなります。
これからも洗練されたユーモア溢れるアウトプットに期待しつつ、鄙の地から応援させていただきたく存じます。